ファシリテーター

藤江 昭彦(日本医療研究開発機構)
勝俣 良祐(エーザイ株式会社)
新井 好史(日本医療研究開発機構)

参加者

21名

概要

天然物創薬をテーマとしたワークショップ(以下、WS)は今回で8回目の開催となる。昨年度は「天然物創薬の未来」をテーマに、全体講演でもご登壇いただいた蓮見先生をお招きし、全体講演では触れきれなかった内容まで深く掘り下げてお話しいただき、ディスカッションを行った。話題提供を行い、その内容を足掛かりとして議論を進める形式が非常に盛り上がったことから、本年度も同様の形式で実施することとした。
供田先生のご講演では、研究人生の中で特に興味深い天然物について、「探索研究ステージ」「前臨床研究ステージ」「臨床研究ステージ」と創薬の各段階に沿って紹介いただいた。今回取り上げられた天然物の多くはフェノティピックスクリーニングから見出されたものであり、評価系の工夫の重要性を改めて認識した。
イントロダクションでは、先生とCeruleninとの出会いから脂質代謝に関連する天然物探索の経緯をご紹介いただいた。その後、「探索研究ステージ」としてTriacsin、Lariatin、Dinapinoneの3つの天然物を紹介いただいた。LariatinはLasso構造を有する環状ペプチドで、その生合成や生物活性は非常に興味深い。Dinapinoneはbiaryl二量体化合物であり、軸不斉を持つ構造を有している。異性体を分割すると活性が減弱するという稀有な特徴を示す点が印象的であった。
「前臨床研究ステージ」ではHymegiusin、Beauveriolide、Mavintramycinが紹介された。特にBeauveriolideは、同じく真菌Beauveria属が産生するBeauvericinと比較して細胞毒性との選択性が高く、注目に値する化合物である。先生の評価系においてもBeauvericinは選択性が低かったが、Beauveriolideは明確な選択性を示した。また、Beauveriolide IIIの選択生産において、最終構造であるD-アミノ酸では力価が伸びず、L-Ileを添加することで飛躍的に向上することが見出された。これは、生合成過程においてL-アミノ酸の取り込みとエピマー化が組み込まれていることを示唆している。
「臨床研究ステージ」ではPyripyropene Aが紹介された。一般的にSOAT阻害剤は薬にならないという常識が定着しつつある中で、SOAT2の組織選択的な発現に着目し、SOAT1とSOAT2の選択性に可能性を見出した。PyripyropeneがSOAT2選択的阻害剤であることを発見した経緯は非常に示唆的である。特に、他のSOAT阻害剤が示すマクロファージの泡沫化をPyripyropeneは全く示さなかったことから、疑問を持ち、徹底的に追究した点が印象的であった。日常の観察と矛盾への洞察が研究において重要であることを再認識した。また、当初の目標であるポストスタチンとしての開発から希少疾患を対象とした開発にした変更することにより、VCからの多額の資金調達にも成功している点が天然物創薬研究を推進する上で大変参考になった。上市がかなった暁には改めてポストスタチンとしての開発も視野に入れている点についても将来のブロックバスターとなるポテンシャルを感じた。
最後に、参加者全員による自己紹介とともに、天然物研究への期待や意気込みを共有し、閉会となった。