発表者

渡部 拓 株式会社医学生物学研究所

タイトル

Fluoppi: Liquid phase transitionsを利用した、タンパク質間相互作用(PPI)の可視化

要旨

近年、タンパク質間相互作用調整薬(PPI modulators/PPIMs)の開発が進展している。細胞内PPIを標的としたPPIMsについては、以下の3つの理由により、試験管内での活性に加え細胞内での活性評価が重要と考えられる。(1)試験管内のアッセイでは、物理的・非特異的にPPIを解離させるような化合物が存在する為。(2)PPIMsは分子量が大きい傾向にあり、細胞膜透過性が低いことが予想される為。(3)細胞内は多様な物質が高密度に集積した場であり、その様な複雑な環境下で活性を有する必要があるため。そこで弊社はPPIを生きた細胞内で可視化する事で、PPI阻害剤の効果をリアルタイムにイメージングする技術Fluoppiを開発した。Fluoppiは四量体蛍光タンパク質と多量化能を有するタグを利用し、PPIを蛍光輝点の有無としてシングルセルレベルで可視化する技術である。系の構築およびアッセイ工程は簡便であり、ダイナミックレンジおよびシグナル/バックグラウンド比が高い点が特徴である。本発表では、まずKRAS(G12C)-Raf, Mcl1-BH3, Bcl2-BH3, BclxL-BH3, p53-MDM2, p53-MDM4などのPPIについて、既存のPPIMsの効果を可視化した結果を報告する。次に、Fluoppiにおいてこれまで明らかにされていなかった、蛍光輝点形成メカニズムの解析を実施した。近年、細胞内でphase separation (相分離)により形成される構造体“liquid phase droplet”(またはBiomolecular condensates)が膜に包まれないオルガネラとして注目を浴びており、シグナル伝達や細胞内凝集体形成への関与が示されている。Phase separationを引き起こすタンパク質としては、intrinsically disordered regions(天然変性領域)を有するものや、多価で相互作用する複数のドメインを有するものが知られる。本発表では、Fluoppiで用いられるタグの性質を解明し、また、Live cell imagingやFRAP法を用いることで、蛍光輝点の内部が流動的であり、liquid phase droplet様の性質を示す結果について報告する。