発表者
市川 保恵 理化学研究所・吉田化学遺伝学研究室
タイトル
HBVの複製を選択的に阻害する糸状菌由来天然化合物の単離
要旨
現在汎用されるB型肝炎ウイルス(HBV)の複製評価法は、感染性のあるウイルスと特殊な細胞を用いて長期間培養する必要があり、スループット性に大きな問題があった。そこで我々は、安全、コストおよび時間の面でより優れた方法の構築を試み、感染性のあるウイルスを用いず、一般的な細胞を用いて、従来法に比して極めて短時間でHBVの複製を数値化し得るアッセイ法の開発に成功した。さらに、この方法を用いた糸状菌抽出物のスクリーニングにより、HBVの複製を濃度依存的に阻害し、細胞障害活性を示さず、かつゲノムおよびミトコンドリアDNAには影響をおよぼさない天然化合物の単離に成功した。この化合物は、単独で抗HBV活性を示すのみならず、エンテカビルによる抗HBV作用を相乗的に増強する。また、薬剤耐性変異型HBV-Polによるゲノム複製をも阻害することから、既存の核酸アナログ製剤とは作用機序の異なることが確認された。