19F NMRによるフラグメントスクリーニング手法の実例

 

演者

農業・食品産業技術総合研究機構 上席研究員
加藤 悦子

 

概要

薬剤開発の手法の一つとして、低分子化合物の構成部位であるフラグメント化合物を用いたFragment Based Drug Discovery法(FBDD)が知られている。FBDDは、空間的に小さなポケットを精密に探索することが可能であり、選抜したフラグメント化合物は分子量が小さいため最適化過程で比較的速やかに活性の向上が見込める点など、多くのメリットを持つ。しかし、分子量が小さいため標的タンパク質への結合は弱く、ヒットした化合物との結合を正確に評価するのが困難である。NMRは弱い相互作用を検出できる数少ない手法であり、フラグメント化合物を用いたスクリーニングを行うには優れている。

一方、フッ素は多くの特徴(原子半径が小さい。電気陰性度が全元素で最も高い。フッ素は化合物中の水素と置換しても体内に取り込まれることが多い(ミミック効果)。様々な代謝を阻害するなど薬効を発揮する。フッ素の導入は親油性を増す。など)を持つことから、フッ素含有化合物は医薬品への期待が高い。実際に、現在市販されている多くの医薬品にフッ素は含まれており、薬剤として多くのメリットをもたらすことが示唆されている。また、NMRの観測においてフッ素は感度が高いこと、化学シフトが広いことからNMR測定を行う核種としても優れている。

以上のことから、フッ素原子を含むフラグメント化合物ライブラリを用いて19F NMRによるスクリーニングを行うことは、薬剤探索の一手法として有効と考えられ、すでにいくつかの報告例もある。本発表では、我々が行ってきた19F NMRによるフラグメントスクリーニングの例を紹介しながら、その有用性について説明したい。