ファシリテーター

髙宮 万里(東京大学創薬機構)
鈴木 秋一(エーザイ株式会社)
 

参加者

26名(登録者28名)

概要

(1)WS趣旨、およびアンケート結果共有

本WSの目的と進め方を研究会HPの案内文に沿って説明し、アンケート結果と回答の要点を、この後の議論の論点として紹介した。

(2)協創ライブラリー理想像の提示

ファシリテーターより議論のたたき台として「協創ライブラリー」の以下の理想像を提示し背景を説明した。

  • 既存の各種化合物コンソーシアム活動と化合物サンプルや関連データ提供を希望する団体を連携し運用を支援するハブとなる体制「協創ライブラリー」を企画、構築、運営することを提案する。
  • 「協創ライブラリー」を実現するためには、産学官からの多様なステークホルダーをまとめ、化合物関連データを第三者の立場でマネジメントできる核となる存在が必須である。また、本分野の人材育成の観点から研究者の議論の場として機能することも期待できる。
  • 化合物構造情報に加え、付随情報と化合物サンプル(粉体、溶液)の管理状況のデータベースの統括が必須であり、例えばインシリコスクリーニングにおいては実サンプルを迅速に入手し試験できる体制を実現する。
(3)フリーディスカッション

上記「理想像」の実現に向け、アンケートから上がった論点に沿って議論した。主な意見を以下にまとめる。

  • 化合物ライブラリーの共同活用を推進することを前提に議論していくが、当然「不要」であるとの考えもあり、目的の目線合わせが先決である。
  • 共同活用を推進する場合、その目的、機能と役割について
    化合物構造情報を一か所に集約し閲覧可能にする、また国内の実化合物保管管理情報をもち化合物サンプルにアクセスできる体制が理想である。
    ランダムスクリーニング対象ライブラリーとして、各社独自の化合物構造に広くアクセスしたい要望は多く、また初期に集めるだけではなく新規構造を追加更新していく仕組みが望ましい。
    化合物構造情報に加えて付随情報(物性、ADMET、薬理活性)を含めて解析するAI創薬の情報源としたい。
    合成や海外からの購入などを経ずに化合物サンプルを入手ができれば、インシリコスクリーニングのヒットフォローアップ、またAI創薬における仮説検証ループの高速化を実現できる。
  • 上記共同利用の目的を実現するための課題について
    化合物共有活動が盛んになる前と比較すると議論は整理されてきているものの、構造情報開示に対する意識の乖離は大きい。利用フローの煩雑さを解消するためには、制限なく構造情報が開示されることは理想だが、共有される化合物の質低下、各研究活動で利用する際のコンフリクトに不安がある。中立的構造閲覧者を設置することが現解決策だが、それでも不安は払しょくされていない現状がある。
    多様な団体が参加することにより、化合物サンプルや化合物情報の提供量に対する組織間の「不公平感」が生じる可能性がある。参加条件の設定と提供量に対するインセンティブ設定の工夫により改善できるのか継続議論が必要である。
    現在稼働している化合物ライブラリー共有コンソーシアムにおいては、各々組織運営、人材、持続性、運営費用に課題がある。「協創ライブラリー」の運営には核となる組織が必要であり、非営利の公共性、持続性をもつことが望ましい。
(4)まとめ
  • 本WSのコンセンサスとして、多様なニーズを持つ多様な団体が、できる限り多様な国内化合物ライブラリーの化合物情報データにアクセス可能となり、検索ヒットすれば速やかにその化合物サンプルを入手できる体制を実現したい。実化合物やデータの管理については課題があり、ある程度集約された化合物DBや化合物倉庫と、それらを利用する団体を連携させる戦略的議論をリードする第三者機関の存在が重要であり、その設置を速やかに推し進める必要がある。
  • WSにおける方向性に関する上記コンセンサスと各種重要意見をとりまとめて関連機関へ発信し、議論の加速を促す。
  • 本WSは、今後も協創ライブラリー実現に向け継続的な議論の場でありたいと考えている。