ファシリテーター

竹田 浩之 (愛媛大学 プロテオサイエンスセンター)
小祝 孝太郎 (杏林製薬株式会社)
長谷川 司 (東京大学創薬機構)
 

参加者

22名
内訳:製薬企業 16名、大学など研究機関 6名

概要

1.ワークショップの目的と進め方

本WSでは,仮想のタンパク質生産のテーマを設定し,与えられた情報を基に生産戦略の検討に取り組んだ.経験レベルの異なる方と議論する事で,普段 「当たり前」 と思って 「やっている事」 や 「やっていない事」 に気づき直し,タンパク取りの際の課題や注意点,それらに対するアプローチを整理する場になることを期待した。
参加者の経験所属を考慮し,偏らないように3グループに分けた。ファシリテーターがアッセイチーム役になり,「キナーゼXの調製をオーダーする」という設定で課題に取り組んだ。最初は限られた内容の情報が提供され、生産戦略を練るためにさらにどのような情報を集めるかについて議論した。次いで追加情報が提供され、それらを用いて生産戦略を検討した。

2.グループディスカッション

議論① 事前情報(標的タンパク質名,標的タンパク質と疾患との関連,細胞内での標的タンパク質の機能,一次スクリーニングで実施予定のHTS assay系と規模,必要なタンパク質量のみ) を提示。収集すべき情報について議論 (自己紹介10分,ディスカッション20分,発表15分)。

議論② 追加情報 (ファミリー,配列情報,構造情報,市販品の有無,市販品の発現系・領域・活性・純度・溶媒・翻訳後修飾・価格,文献情報)を提示し,生産戦略を議論 (ディスカッション30分,発表25分)。

議論①で各グループから発表された「必要な情報」のほとんどは,ファシリテーターが議論②の為に用意した「追加情報」で網羅されていた。全ての項目をとりあげたグループはなかったことから,議論①後に他のグループの発表を聞くことで気付きが得られた参加者も多かったと思われる。議論②生産戦略に関しては,「大腸菌発現系を優先」,「依頼者との連携を取りながら進める」,という点は共通していたが,議論の焦点はグループによって分かれた。なかにはHTS以降のバリデーション後までを考慮した発現コンストラクト案を提示するグループもあった。一方で,予定した発現系で全く取れなかった場合の議論をしたグループはなかった。
最後に,全体でフリーな質問タイムを設けWSを終了した。

3.まとめ

今回のWSは,敢えて不完全な情報とビジーな情報をそれぞれ提示し,それらを読み解き戦略を練るという趣旨の初めての試みだったが,ビギナーの方も自分なりに考えて疑問点や意見を述べてくださり,議論が止まってしまうこともなく,ワークショップの目標は概ね達成できたように感じた。ディスカッションを通じて,多くの参加者の方にタンパク質を作ること,使うことに王道(ゴールドスタンダード)はなく,経験や知識を総動員して問題を解決していく必要があることを理解していただけたら幸いである。