妹尾 千明 (日本医療研究開発機構)
近藤 滋 (武田薬品工業株式会社)
尾野 晃人 (Axcelead Drug Discovery Partners株式会社)
概要
PDDおよびヒット化合物のターゲットデコンボリューションに関する課題を有しており、それらの課題について共有、議論したい方々を対象とした。5-7名の参加者からなるグループで議論したうえで、最後に各グループから議論内容を発表していただく形式で進めた。各グループともに、企業、アカデミア、研究機関、それぞれからの参加者がバランスよく含まれるよう構成した。今年度は4グループでの実施としたため、議論時の取りまとめ役として、本WSのファシリテーター3名に加えて、参加者であった田辺三菱製薬の加藤様にサポートをお願いした。
【議題】
以下の2つの議題を設定した。
前半:ターゲットデコンボリューションの状況
後半:各グループで設定
グループディスカッションの前に、ファシリテーターから事前アンケート結果の紹介(近藤)とターゲットデコンボリューションの事例紹介(尾野)を行い、その内容も踏まえてグループでの議論を行った。
【ターゲットデコンボリューションの状況】
各参加者ともに、数あるターゲットデコンボリューションの打ち手のいずれかにトライしている方が多かった。中でもPALプローブを用いたケミカルプロテオミクスにトライしている方が多い印象を受けた。課題としては、ターゲットデコンボリューション成功率の低さ、再現性の問題、一次標的候補タンパク質を同定後からvalidationステップまでに標的分子を効率よく絞り込む方法の不足、社内での部門間連携等が挙がった。成功確率は高くなく、多くの課題が見えるものの、ターゲットデコンボリューションにトライしている会社、研究機関が数年前よりも増えている印象を受けた。参加者同士でも積極的な議論がなされており、参加者にとっても収穫がある議題設定になれば幸いである。
【後半の議論】
後半はグループごとに議題を設定したが、前半のターゲットデコンボリューションとは異なり、PDD評価系の議論を選択したグループが多かった。参加者からどのような表現型を見るのがよいだろうか?という声が多かった点が印象的であった。年を追うごとにiPS細胞の利用が拡がっていると感じるが、その一方で、例えばWTと変異を有する細胞の間でどのような表現型の違いがあるかを調べることが難しい、差が認められた表現型が疾患を反映しているかの確証が持てない、といった意見が多く聞かれた。今後iPS細胞やオルガノイドがスクリーニングツールとして広まっていくために、改善すべき課題であると感じられた。また、iPS細胞の分化誘導やオルガノイドに関して、それらの特許の複雑さを課題に挙げている参加者も見られた。
【総括】
数年ぶりのオンサイト開催となったが、ファシリテーターとしては、昨年度のオンライン開催と比較して議論が活発になった印象を受けた。オンラインの場合は発言のタイミングが掴みづらかったり、ファシリテーターが参加者に発言を促したりというケースも多かった。face to faceとなった今回は、参加者間での質疑応答などもあり、全体的に皆さんも話がしやすかったのではないかと思われた。ネットワーク構築という観点からも、オンサイト開催のメリットは大きいのではないかと感じた。