ファシリテーター

高土居 雅法 (杏林製薬株式会社)
山本 純(日本たばこ産業株式会社)
瀧弘 恒(小野薬品工業株式会社)
髙木 理智(シオノギテクノアドバンスリサーチ株式会社)
 

参加者

20名

概要

昨年に引き続き、DMSO溶液管理の外部委託と内製のメリットとデメリットをテーマに取り上げた。参加者はファシリテーター4名を含む全20名であり、事前アンケートに基づき5名ずつ4グループに分かれ、全ライブラリの外部委託、外部委託と内製の併用、およびコンソーシアム活動等によりライブラリを拡充しつつ委託先機器等を活用する、の3つのケースについて議論した。討議結果を以下に略記した。
 

(1)全ライブラリを外部委託するケース

  • (先行事項)委託先と化合物管理部署、ユーザー間で外部委託移行による着地点(変化を容認できる点と容認できない点)をすり合わせる。また、業務仕様のアレンジ要否を十分に協議する。
  • (準備段階)引き合いが集中している消耗品(例:384チューブ)があるため、綿密な計画を立て時間に余裕を持つ必要がある。
  • (準備と作業段階)実体管理システム改修は最も律速になりやすく、かつ費用が高額になりやすい。
  • (利用開始後)差分ライブラリを委託先機関へ送付する時期の調整が必要である。また化合物管理に関する属人化の防止策も検討が必要。
     

(2)外部委託と内製を併用するケース

  • (準備段階)委託化合物の移し替えに必要な工数や消耗品、機器の確保を進める。指定容器への移し替えのために適切な機器の使用が困難な場合、機器メーカーからの一時的なレンタル契約にて調達することも検討する。また、社内業務に支障が出ないよう業務時間を配分する。
  • (準備段階)実体管理システム連携が可能な場合は、改修費用の予算化と委託先との調整を実施する。
  • (社内調整)化合物資源のどの部分を外部委託することになるのか、外部委託による化合物提供業務の変更点(依頼方法、納期、プレートレイアウトの制限など)について、各担当者や関連部署間で認識の擦り合わせをしておく。
  • (準備段階)依頼システム、および化合物在庫管理の仕組み(自社管理分、外部委託分、共有ライブラリ分)、作製されたプレートの自社データベースへの登録方法など、既存システムの改修、あるいは新規システム構築の必要性について確認し、並行して検討しておく必要がある。
  • (委託開始後)人財育成や手順書の作成、業務システムの改修等の環境整備を進める。ノウハウ維持を計画的に行い、スキル伝承に努める。
  • (委託開始後)品質保証については委受託双方の基準作りと運用に課題が生じることが懸念されるため、時間をかけて調整を進める必要がある。
     

(3)コンソーシアム活動等によりライブラリを拡充しつつ委託先機器等を活用するケース

  • [ライブラリ共有コンソーシアム(以下、コンソ)への自社ライブラリ供出と出庫依頼]このケースの場合は既存のコンソ利用を前提としているため、供出する自社ライブラリの準備段階から送付、そして出庫依頼に至る作業の多くをコンソの規約やルールブック等に沿って行う。供出化合物の選抜については、計算化学だけでなく溶液在庫量に余裕のある化合物であることが重要である。自社ライブラリの供出(自社保管庫からチェリーピックしてコンソ指定の容器へ移し替える)作業に必要な日数は、通常業務とのバランスで見積もる。供出する化合物や出庫を依頼する化合物の電子ファイルを、Excel等の汎用アプリで作成するか、社内システムに組込むかを検討項目とする。委託先機関は、供出した化合物の品質について、委託元から受領した溶液を委託先機関が使用する容器(384チューブ)に移し替えた時点から保証する。
  • (コンソが持つ付加価値の利用)コンソが提供する共有ライブラリや分注機の利用だけでなく、委託先機関所有のライブラリや機器、研究スタッフによる各種アッセイ技術、さらにはADMETなどの付加情報を利用することで有望なヒット化合物を効率よく選抜することが可能になる。これらの付加価値利用を委託先機関と協議するのが望ましい。
     

ライブラリの外部委託を実施する際は、いずれのケースにおいても本格稼働後のライブラリ仲介部署としての化合物管理業務が多忙になる恐れがあり、できるだけ標準化できるプロセスを増やし、業務負担を減らす必要がある点が明確化できた。また、委受託双方にとって隙間のない丁寧なコミュニケーションが成功裡に進める最も重要なポイントであることがわかった。

委託先へ化合物発送するまでの工程表(ガントチャート)を作成し、参加者全体で共有することをゴールとしていたものの、全グループがたどり着けなかった。一方で、事前にファシリテーター間で抽出した討議ポイント案を基に、議論を深耕することができたと同時に、先行事項や付加価値利用等の新たな切り口の視点も参加者から引き出すことができた。次年度以降も化合物管理の視点で低分子創薬へ貢献するべく、適切なテーマを設定したうえで本WSにて継続して議論し、参加メンバー間で共有していく。