ファシリテーター
株式会社中外医科学研究所 妹尾 千明
武田薬品工業株式会社 船田 雅昭
Axcelead Drug Discovery Partners株式会社 尾野 晃人
【概要】
PDDに関する課題を有しており、PDDの今後の方向性を議論したい方々を対象とした。5-6名の参加者からなるグループを作り、それぞれのグループで議論していただき、最後に各グループから議論内容を発表していただく形式で進めた。各グループともに、企業、アカデミア、研究機関、それぞれからの参加者がバランスよく含まれる構成となった。
【議題】
以下の2つの議題を設定した。
前半疾患表現型アッセイ系構築、ターゲット同定戦略
後半PDDの可能性、新規モダリティー検討など
各議題ともに、ファシリテーターから事前アンケートの結果と最近の事例紹介を行い、その内容も踏まえてグループでの議論を行った。
【疾患表現型アッセイ系構築、ターゲット同定戦略】
構築難易度が高くスループットが低い疾患表現型アッセイ(iPS由来細胞を用いたPDDなど)を行う機会が増えている印象を受けた。しかしながら、構築したアッセイ系がどこまで疾患を反映しているかについては、引き続き課題であるとの意見が参加者の多くから聞かれた。例えば、iPS細胞から目的の組織に分化誘導した細胞をPDDに用いる場合、分化マーカーを指標に目的細胞への分化率が高い系を構築する傾向があるが、生体組織内での複雑系を考えると、目的の分化細胞のみが大半を占める評価系が本当に病態状態を反映しているのか?といった意見もあった。PDDで見いだされた化合物の臨床試験結果等の蓄積が必要であると思われる。
スクリーニングヒット化合物のターゲット同定戦略については、企業では複数の打ち手を用いて試行錯誤をしている様子が伺えた。一方、アカデミア所属の参加者からは、合成部門がないため、ターゲット同定用のプローブ合成が困難であるという声も聞かれた。この分野においても、企業とアカデミアの積極的な協業が期待される。
【PDDの可能性、新規モダリティー検討など】
Target-orientedスクリーニングにおいては、低分子化合物から中高分子やペプチド、核酸等へのモダリティシフトの流れが加速化している。PDDにおいても新規モダリティーへのシフトという発想はあり得るか?という視点で議論を行った。事前アンケートでは、新規モダリティーはTarget-orientedスクリーニングのためのものと考えている、との声も多かったが、議論後にはPDDでも検討する価値があるかもしれないとの意見が聞かれた。また、PDDの評価系もiPS細胞やスフェロイドの活用など改良が進んでいるため、低分子化合物の価値も引き続き高いのではないかという意見も聞かれた。参加者がPDDの今後の方向性を考えるうえで、今回の議論が何らかの気づきに繋がれば幸いである。