開催趣旨
近年、創薬分野において人工知能(AI)技術の導入が加速しており、ハイスループットスクリーニング(HTS)との組み合わせは、より効率的で戦略的なヒット化合物探索を可能にするものとして注目を集めています。特に、分子構造の生成や複合体の立体構造予測といった分野では、AIの進歩がめざましく、従来の手法では到達が困難であった化合物設計や結合予測の新しいアプローチが現実のものとなりつつあります。
本チュートリアルでは、HTSに携わる研究者がAI技術を創薬研究に応用するための基礎的な知識を身につけることを目的として開催いたします。初回となる今回は、「分子構造生成器」と「複合体立体構造予測」の2つのトピックに焦点を当て、それぞれの理論的背景と実際の応用例についてご紹介いただきます。AIを活用した分子生成アルゴリズムや、タンパク質–リガンド間相互作用の立体構造予測ツールなど、具体的なツールやワークフローを通じて、現場での活用を見据えた実践的な知見を提供いたします。
講師には、創薬AI研究における第一線で活躍するアカデミアおよび企業の研究者の皆様をお迎えし、実例を交えた講演を予定しております。AI創薬に興味を持ちつつも導入に踏み出せていない方、HTSにAIをどう組み合わせるべきか模索している方、実務での活用に向けた情報を得たい方など、多くの方のご参加をお待ちしております。
参加者の皆様には事前にアンケートを実施し、AI創薬に関して日頃疑問に思われている内容を募集いたします。頂いたご意見は講師の皆様に共有し、講演内容に可能な限り反映させていただきます。参加登録の際にはアンケートへのご回答をお願いいたします。アンケート集計の都合上、6月6日(金曜日)を登録および回答の締切日といたします。
【重要】登録いただきました氏名・所属は取りまとめ後、参加者リストとしてチュートリアル講師に提供いたします。連絡先情報は研究会運営のため研究会事務局にて管理し、事務局からの連絡、スクリーニング学研究会主催・共催のセミナーおよび事務局で有用と判断した情報の案内に利用いたします。事前の承諾なく個人情報を第三者に提供することはありません。
テーマ | 「HTS研究者のためのAI創薬入門」 | ||||||||||||||||||
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主催 | 一般社団法人スクリーニング学研究会 | ||||||||||||||||||
共催 | 東京大学大学院薬学系研究科附属 創薬機構 | ||||||||||||||||||
日時 | 2025年6月13日(金) 13:30 − 16:40 | ||||||||||||||||||
場所 |
Zoom webinarによるオンライン開催 (6月10日に接続linkを連絡予定) |
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プログラム |
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参加費 | チュートリアルの参加費は無料 | ||||||||||||||||||
参加資格 | 特には制限を設けませんが、同業他社のご参加はご遠慮ください。 | ||||||||||||||||||
定員 | 100 名(定員になり次第締め切ります。) | ||||||||||||||||||
参加方法 |
リンク先にアクセスし必要事項をご記入の上お申込みください。 |
講演要旨
1. 分子構造生成器の基礎とその利用法
株式会社Elix 井上 貴央
分子構造生成器は化合物の分子構造をコンピュータ上で発生させるものである。生成された化合物の中から有望な化合物が見つかる例もあり、創薬での応用が期待されている。本講演では、特に深層学習による分子構造生成器を取り上げ、構造生成器がどのように分子構造を出力するかを解説する。加えて、実際のプロジェクトで構造生成を実施する際に注意すべき点についても述べる。
2. AlphaFold時代における構造予測技術とバーチャルスクリーニングへの応用
株式会社Preferred Networks 富田 篤弘
AlphaFoldによって進展した構造予測技術は、近年注目を集めています。本講演では、最近の構造予測技術の概要を解説し、複合体の構造予測手法についてのチュートリアルを行います。さらに、構造予測を活用したバーチャルスクリーニングについて具体的なケーススタディを通じて紹介し、AlphaFold時代におけるバーチャルスクリーニングの可能性を探ります。
3. 理研でのAI創薬事例
理化学研究所 池田 和由理研
では、AIを活用した新しい創薬手法の開発を進めている。今回、実験と予測を交互に繰り返す反復スクリーニング(Iterative Screening)へのAI導入による創薬プロセスの効率化事例を紹介する。また、過去の創薬データを活用したAIモデルの実用性検証や、メディシナルケミストが持つ専門的な経験(暗黙知)をAIに取り込む取り組みについても触れ、AI創薬の可能性や今後の課題について議論を深めたい。