ファージセラピーで切り拓くAMR対策

酪農学園大学獣医学群獣医学類 獣医生化学ユニット・教授
岩野英知

要旨

抗生物質に耐性を獲得した薬剤耐性菌は着実に広がっており、このまま何も対処しないと2050年にはガンの死亡者を超えて年間に1000万人以上の死者が出ると予測されている。その対策の切り札として細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)を用いたファージセラピーが注目されている。ファージセラピーは抗生物質より古くから細菌感染症治療に用いられ、特に東欧諸国では盛んに行われてきた治療法である。近年、多剤耐性Acinetobacter baumanniiの感染による危篤状態からファージセラピーにより復帰したパターソン症例(Antimicrob Agents Chemother. 2017 61(10):e00954-17)などが報告され、世界中でファージ製剤の開発やファージライブラリーの構築など実用化の動きが活発に行われている。ファージの実用化においては様々な課題があるが、特に細菌のファージ耐性化に対する解決策をどのように考えるかという点は重要である。遺伝子の変異を伴う細菌のファージ耐性化は、そのトレードオフにより我々にとって有利となる細菌の表現系の変化を引き起こすことが知られている(薬剤感受性の亢進や病原性の低減など)。本発表では、ファージセラピーの現状と実用化への様々な課題、そして我々が行った犬の難治性細菌感染症への臨床試験の成功結果を通して、ファージセラピーの臨床応用の利点と課題について解説していく予定である。細菌とファージ、それぞれおよそ30億年にわたり地球上で共進化を遂げて生き延びてきた歴史があり、そのシステムをうまく利用する戦略によりファージセラピーの実用化が見えてくるのではと考えている。

 

略歴
学 歴
1996年 3月
酪農学園大学酪農学部獣医学科卒業
1996年 4月
酪農学園大学獣医学研究科博士課程入学
1999年 3月
酪農学園大学獣医学研究科博士課程卒業(卒業規定に達し1年早く卒業)
学 位
獣医学博士  1999年3月取得
 
職 歴
1999年 4月
大阪大学たんぱく質研究所生理機能部門・研究生
2000年 1月
大阪大学たんぱく質研究所生理機能部門・講師(COE研究員)
2002年 2月
日本学術振興会海外特別研究員(アメリカ、テキサス大学、M.D.アンダーソン癌研究所)
2003年 9月
酪農学園大学獣医学部 獣医生化学教室・講師
2007年 4月
酪農学園大学獣医学部 獣医生化学教室・准教授
2016年 4月
酪農学園大学獣医学群獣医学類 獣医生化学ユニット・教授
 
現在に至る

 


 

日産化学におけるDNA-encoded Library技術構築

日産化学株式会社 物質科学研究所 医薬研究部
主任研究員 丹羽 雅俊

要旨

DNA-Encoded Library(DEL)技術は、High-throughput Screening(HTS)の課題を解決し得るスクリーニング手法として近年注目されている。HTSは、創薬スクリーニングの主流の手段であるが、評価に必要な期間・コストの観点で規模の制約が存在し、アプローチ可能な化合物数・標的数に限りがある。これに起因するHTS実施のハードルが、創薬への挑戦(化合物構造への挑戦、標的への挑戦、作用機序への挑戦、など)を難しいものにしている。
日産化学ではDEL技術が、HTSの限界を打破し、創薬スキームに変革を起こす有望技術と考え、社内で技術構築に取り組んでいる。本発表では、DEL技術の概要を説明するとともに、当社の取り組みとして、独自に開発したNC-DEL技術およびNC-DELの合成指針について紹介する。

 

略歴
TBA