第9回スクリーニング学研究会 Workshop まとめ

 ページ内目次
 1. PPI創薬
 2. 化合物管理 非日常業務への対応
 3. 化合物管理 -ステップアップをめざして-
 4. iPS細胞の利用 iPS細胞を利用した創薬の未来を語ろう
 5. アッセイ系構築
 6. HTS Automation System戦略
 7. HTMS-WS ~発見!質量分析ってこんなことできるんだ!~
 8. 表現型創薬(Phenotypic drug discovery:PDD)の可能性と課題スクリーニング戦術ならびに戦略を考える
 9. HT-ADMET
 10. Biophysical methods ―オリジナルのBiophysical methodリストを完成させよう―
 11. ヒット選抜
 12. 2020年以降の低分子創薬戦略
 13. 天然物創薬で、「こんなことできたらいいな」を語る
 14. HCSにおける画像解析の可能性


【Track 1】PPI 創薬;タンパク-タンパク相互作用(PPI)阻害剤取得のための最適な手法はなにか?

ファシリテーター:
アステラス製薬 原田 博規
慶応大学 片倉 晋一 PRISM BioLab 西田 晴行

タンパク-タンパク相互作用(PPI)に対する創薬手法として、様々なアプローチが実施されているが、低分子ではHIT取得並びに最適化の困難さ、中分子では膜透過性と活性の両立の困難さが課題となっており、切り札となる手法は未だ見いだせていない。そのような現況を踏まえて、話題提供として、ファシリテーターから、①Affinity selection を用いたHIT取得、②蛋白の多量体を安定化する化合物によるPPI Modulation を紹介させて頂いた上で、新たな切り口でのPPI 創薬手法がないか情報交換と議論を行った。

低分子に関しては、PPI創薬には厳しいという意見と、PPI でも低分子で阻害可能であるという否定・肯定双方の見解があった。また、肯定する意見では計算化学手法と低分子PPI用ライブラリーの改善がKeyになっていた。また、DELs(DNA encoded Library)でのPPI阻害剤の取得への期待もあった。
中分子では、PPI阻害活性のある化合物が取得できる可能性が高く、課題であった膜透過性・経口吸収性は少しずつ克服されていており、中分子HITをからの低分子化の手法も検討されている。

アカデミアでの新しいPPIを探す試みがあるとの紹介があった。また、コンソーシアムでPPI創薬を行ってはという意見があった。
アッセイ系についてはFunctional assay の方が有効であるとのご意見もあった。

話題を絞った方が良かったかもと反省点もある一方、参加の皆さまは、PPI創薬について幅広く生の情報・意見交換ができたと思います。

 


【Track 2】化合物管理 非日常業務への対応 まとめ

司会者(3名)を除き参加者は15名。司会者はテーマごとに固定、15名を三つのグループに分け、①秤量業務関連(担当:塩野義平松)、②調液業務関連(担当:日本たばこ 山本)、③化合物廃棄関連(担当:小野 長尾)の三テーマについてのそれぞれ30分間ずつ討議を行い、最後に各テーマについて総括を行った。

秤量業務関連

原末秤量における電子天秤の環境と、粉以外の状態(オイル、ドライフィルム、ふわふわの状態)への対応について、各組織の特有の対応方法のご意見をいただいた。

  • 電子天秤は、ドラフト内外の設置で様々であり、安全面で低風量型ドラフト内設置のところもあるが、安全面のケアを厚くすればするほど、ハンドリングが難しくなり、風量による電子天秤の安定性の低下による秤量パフォーマンスの低下につながること がある。
  • 安全面の対策として、フィルム上のフェースガードを採用しているところがあった。電子天秤はその安定性から建物の1Fや地下にある方が望ましいが、地下の設置であっても台風接近時の低気圧下では安定性は低下することが確認できた。
  • バイアルに入った原末量管理について、空バイアルの重量を予め測定しておき、全体量からバイアル重量を差し引くことで内容量を確定することが多い。バイアル重量は測定時の湿度や気圧によって異なることが判っており、内容量が正しくないことがある。その点については認識されているところは多く、バイアルへの溶かし込みを禁止しているところもあった。
  • 粉以外の状態(オイル、ドライフィルム、ふわふわの状態)への対応については、可能な限りスパーテルや竹串で対応しているところが多く、揮発溶媒への溶かし込み、小分け乾固の対応をしているところはなかった。
  • 依頼時に、秤量できない際の対応方法を依頼フォームに記入させる対応をしているところがあった。基本、スパーテルや竹串で対応できないものについては依頼者に相談の上、返却やキャンセル、依頼者対応としている。一方で、ふわふわの状態の秤量時 静電気の影響で飛び散り等の秤量不具合がある。これに対しては、帯電防止スパーテル、徐電機、帯電防止チューブなど対策をとっているところが多かった。

調液業務関連

  • 通常(低分子化合物/DMSO)ではない例外的な調液の事例として、核酸アナログ/ 水、低分子化合物/水、高濃度低分子化合物/重DMSO、低分子化合物/DMF が挙げられた。いずれも通常のサンプルとは分注先(プレート等)を分け、混在しないようにしている。
  • 高濃度のため超音波処理しても溶けない場合の対処方法を意見交換した。ソニケーションの条件が強すぎると懸濁液の温度が上昇して化合物の分解が懸念される。高濃度での調液を求められた場合は、依頼者に対して、その化合物が高濃度で溶解できる根拠データなどを(化合物提供元から)入手するよう要望しているとの事例や、逆に、液が均一になるまで段階的に希釈しているという事例が紹介された。
  • 化合物管理の部署が扱うサンプルの用途は、ほとんどの参加者が、HTSやフラグメントスクリーニング用の原末と溶液であったが、約半数の会社ではプロジェクト(テーマ)化合物のサンプルを扱い、さらに一部の会社では、開発ステージの原末や合成中間体原末を管理しているところもあった。開発ステージの化合物は通常の依頼システムでは受理せず、印刷・押印された申請書が必須であるとの運用事例が紹介された。

化合物廃棄関連

  • 法規制化合物以外で化合物廃棄を実施しているのは参加者の半分程度組織で、純度が基準より下回った場合、あらかじめ決めておいた保管期間を過ぎた場合(Echo プレート)、保管庫が満杯になった場合などに廃棄を実施している。一方で、廃棄の基準がない、純度が低い化合物、分解している化合物場合であっても、ケミストの許可が出ない、会社の資産だから勝手に廃棄できない、分解物からヒットが出る可能性があるなど、担当者の判断では廃棄できなくて困っているケースも相当数見受けられた。
  • 溶液純度が低くて廃棄した場合、原末に遡って純度を確認している施設はなかった。また、構造フィルターにおいて除外対象の化合物の場合あっても、HTS には使用しないが、原末や溶液(チューブ)は廃棄しないようである。
  • 原末在庫量が限りなく0mg に近い場合であっても、分析が可能との理由から廃棄させてくれない組織もあった。
  • 所持不可の法規制に該当する場合に、本社サイドから廃棄した証拠写真を残すよう言 われたことがある。また、信頼性を高めるため最低二人以上で廃棄作業を行うように している施設もある。
  • フリーザーなどの保管機器が壊れた時の対応として、霜取り時の利用も考慮して、予 備機の設置している。

 


【Track 3】化合物管理ーステップアップをめざしてー 議事録

今回の化合物管理ーステップアップをめざしてー ワークショップには、ファシリテーターを除き、14名の方にご参加いただいた。3グループに分かれたグループ討議を、途中でメンバーを組み換えて2回行い、最後に全体討議を行った。討議の概要は以下の通り。

・Echo プレート
吸湿したソースプレートのレスキューとして、デシケーターにDMSOを充填して、プレートを入れて脱水する方法が紹介された。分注不良の検知について、社内の複合機でスキャンして、画像を見て確認する方法が紹介された。

・分注の自由度 
分注依頼に対し、中程度の自由度を許容しているところが多かった。限られたリソースの中で、できるだけユーザーの要望に応えるためには、メニュー作成や、システムで依頼が有効との意見があった。

・96 チューブの廃棄ルール
貴重な創薬資源であり、半永久的に使用したいという意見、文献ベースのルール策定が重要という意見、化合物の時流やトレンドに合わせた対応が必要という意見があった。

・プレート等の不良
プレート不良について、穴あき、寸法不揃い、特定のウェルへの付着物の混入等の経験が紹介された。不良品情報は共有されないため、不良品に気が付かずに使用しているケースも考えられる。スクリーニング学研究会の枠組み等で、消耗品の不良品情報を共有する方法があったらよいのではないかという意見があった。

・化合物管理業務の属人化
メリット(専門性の深化)とデメリット(担当者不在による作業能力低下)の両面がある。

・化合物自動倉庫の更新
化合物倉庫は長期スパンで考える必要があるため、端末のOS更新も考慮する必要がある。化合物保管のアウトソーシングを考えるのも一案であるが、その場合、社内に一部を残すのか、スキルの継承をどうするのかについて検討する必要があると思われる。

・化合物自動倉庫を利用しない原末化合物の在庫管理
在庫管理は、自動倉庫会社のシステムを利用しているところが多い。自動倉庫を利用しない場合もシステムを作成してもらうことは可能であるというアドバイスがあった。Titian 社のMosaicは、各社興味を持っている。いろいろな機器への接続のAPIがそろっているという情報提供があった。

・化合物自動倉庫に格納する96 チューブの共上げ、ロボットによるチューブ破壊
原因は線維くず。分注作業を除湿ブースで実施すれば線維くずが付着しないという経験が紹介された。

【次回以降の課題】

今回は、例年よりも参加者が少なかったにもかかわらず、トピックが多岐にわたり、例年と同様、個々の議論に十分な時間がとれなかったように思われる。議論範囲を思い切って絞ってしまうことや、WS 参加者内での、メールベースでの事前討議等、何らかの工夫があればよいと思われた。

 

 


【Track 4】iPS細胞の利用

テーマA. iPS細胞を使った創薬 “創薬関連科学への貢献”

疾患iPS細胞の利用には期待が高く、正常細胞と疾患細胞の違いが再現性良く評価できるフェノタイプアッセイ系の開発に将来的な期待が寄せられていた。特に神経細胞への分化が比較的容易であり、中枢神経系の細胞利用への関心が高まっていた。アッセイ系としては、Coefficient of variation が小さく...... に耐えるものをつくることが重要であり、そのために克服するべき複数の課題、すなわち細胞の供給や分化誘導法の標準化など、が挙げられた。今回の議論においては、フェノタイプスクリーニングがキーワードであり、疾患細胞を取り扱う場合には特に重要となる。実用化においては、分化誘導法までを含むライセンス料が高いので、ライセンス料を成功報酬型にしてもらえば開発に弾みがつくという意見があった。現状では、...... 細胞の創薬利用を実現しているのは、大手企業とごく一部の大学のみであり、...... 細胞を使った創薬科学の裾野が広がっていないことが懸念される。さらに、産学連携の在り方について議論されたが、双方への期待感に多少のずれを感じた。今回の議論では実用化に関する問題点の指摘が多かったので、次回は夢のある将来展望を議論していきたい。

テーマB、iPS細胞を使った創薬 “産産学官”の連携

iPS細胞利用開始前の課題:
研究をどのように始めたらよいか分からない、ライセンス料が高い、権利関係が複雑、試薬コストが高い等

必要な連携・解決策:
産産学官横断的な連携で参入のハードルを下げ、「とりあえずやってみる」ことができる仕組みを作り裾野を広げる(...... 細胞がより普及し、活用の場面も更に多様になるのではないか)。例えば、基礎研究で先行する【学】はライセンス料軽減(成功報酬型は?)や技術・情報(プロトコル、ノウハウ)の共有、【産(製薬)】は(活性既知)化合物・データベースの共有やニーズの提供、【産(装置・消耗品メーカー)】は自動化促進やシステム画一化(し難いが)によるコスト低減、【官】は公的バンク・データベースの構築・公開や【産】【産】へのより積極的な研究助成、等が解決策となりうるかもしれない。

iPS細胞利用開始後の課題:
大量の細胞をどう確保するか、市販分化細胞の性状は使ってみないと分からない、バラツキが大きい(株間、施設間、実験者間、ロット間、ウェル間、分化誘導間等)、生体・病態モデルとしての妥当性をどう担保するか等

必要な連携・解決策:
【産(装置・消耗品メーカー)】や【学】が開発する、評価・使用に耐えうる細胞を判別・回収する装置、.. 分子トランスクリプトーム解析・多検体 RNA-seq 等、先端技術により解決しうる可能性がある。また、利用用途に応じた連携(具体的には、安全性・薬物動態といった非競争領域では【官】が主導するコンソーシアム、薬理研究では【がスクリーニングを、【学】が病態解明・臨床ブリッジングを担当するような役割分担、【産(製薬)】・【学】のニーズに応じた装置共同開発、等)がより柔軟に行えると効果的ではないか(行いたい)。

テーマC 入口戦略

疾患の選択
疾患iPS細胞を企業が創薬を目指すときに、薬で治療可能な疾患を選択することをまず 考えなければならない。機能的な異常あるいは徐々に起こる細胞死などが見られる疾患が 例として挙げられる。市場性つまり患者数で疾患を選択できればいいが、希少疾患がほと んどであるためなかなか患者数だけから選択できない。
Orphanet などのオープンなデータベースから疾患の概要、原因遺伝子などの情報をも とに絞り込むことがいくつかの企業でおこなわれている。

評価
細胞に着目。神経であれば、細胞の形態やミトコンドリアの局在。オートファジーの増 減、タンパクの凝集などが疾患と関連している表現型
疾患の変異している遺伝子から産生されるタンパクの機能に着目してスクリーニング系 を構築する。

 


【Track 5】アッセイ系構築

ファシリテーター: 
渡邉 信次郎(キッセイ薬品)、 内田 実(ジェノスタッフ)
参加者 50 名

ワークショップは、下記の流れおよび時間配分で進行いたしました。

  1. 【グループ分け】(5分)
    くじをひいて各グループに分かれた(5~6人/グループ)
  2. 【自己紹介&アイスブレイク】(10分)
    グループ内で自己紹介&アッセイ系構築にまつわるクイズの答えをディスカッション
  3. 【事前アンケートフィードバック】(10分)
    ・アッセイ系の選択、構築、実施において重要と考えるポイントについて回答の多かった項目、また個別回答で挙がった様々な課題や疑問点の紹介
    ・アンケート結果を基にしたディスカッション項目を発表
  4. 【グループディスカッション】(60分)
    提示した複数のディスカッション項目から、各グループで討議内容を選択して意見交換
  5. 【ディスカッション内容発表・全体討議】(30分)
    ・各グループの集約意見を代表者が発表・挙げられた疑問に対する、ファシリテーターや、フロアの方々によるコメント/回答
  6. 【WSのまとめ】(5分)

本WSは参加していただいた多くの方々に積極的な意見交換をしていただけるよう、5~6人/グループに分かれて参加していただきました。アッセイ系構築、HTS実施、安全性、アカデミアおよびベンダーといったご所属とご経験度様々なメンバー構成のため、入室時に製薬企業・その他の企業・アカデミアが均等に分配されるようにしました。グループ内での自己紹介の後、アイスブレイクの要素を兼ねてアッセイ系構築に関するクイズの回答を協議していただき、アッセイ系構築における課題をシミュレーションするきっかけといたしました。

次に、担当業務、用いるアッセイ系や、構築する上で重視しているポイントなどに関する事前アンケート回答をフィー ドバックしました。課題があるという回答が多かった項目をより具体的な観点で分類し、また個別回答欄に記載された疑問なども紹介しました。これらの意見から参加者を通じて共通と考えられる項目を選抜し、本WSでのディスカッション項目として提示しました。

その後、提示した複数のディスカッション項目から各グループで討議内容を選択していただき、課題に対する取り組み方や解決策に関して討議していただきました。ディスカッション項目は、アッセイ精度、ばらつき回避、評価系の選択および分注機の選択などのアッセイ系構築に伴う話題に加えて、評価系のトランスファー時の課題、再現性の基準、陽性・陰性対照の設定、化合物の取り扱いおよび偽陽性・偽陰性の考慮などを取り上げました。提示した内容だけでなく、グループ内でニーズのあった話題についても意見交換していただきました。

最後に、各グループでの討議内容を代表者の方に発表していただきました。多様な項目について各グループで活発な意見交換がなされ、細胞播種のコツ、エッジ効果の解消方法、ヒット判定時に考慮するべき点やアカデミアでのスクリーニングにおける課題、陽性対照化合物がない場合に注意する点など様々な話題や解決方法が提示されました。

本WSを通じて様々な背景の方々により、アッセイ系構築の進め方、実験上の具体的な課題および試験結果の判断など多岐に渡る項目について各自の課題を持ちよって活発に議論していただきました。懇親会にて、各グループの討議の中で多くのディスカッション項目について概ね課題解決が図られたというコメントを参加者の方からいただき、積極的な意見交換の場となった様子が伺えました。課題の解決や悩みの共有だけでなく、所属や目的の違いによる業務の進め方や価値観の違いなどを共有できたことも新たな発見となり、スクリーニング学研究会ならではの有意義な時間となりました。

以上

 


【Track 6】HTS Automation System 戦略

ファシリテーター:
青木 美香 (エーザイ株式会社)
大畑 六宏(アステラスリサーチテクノロジー株式会社)
沼澤 香穂里 (株式会社中外医科学研究所)

【概要】

16名(ベンダーを含む)にご参加いただいた(8名ずつ2グループを作成)。最初に本ワークショップの 目的を共有し、全員の自己紹介を行った。その後、automation の用語の定義を行って参加者内の共通認識をできるだけ合わせて、事前アンケート結果を共有した。続いて、ベックマン・コールター株式会社 樽井様、株式会社LABCYTE 石田様に、近年の製薬企業でのautomation の傾向についてお話しいただいた。後半は、アンケート結果から意見の多かった、7項目の分類(①一部自動化 vs 完全自動化、②お金をかけずに設備投資、③システム仕様の決定と運用、④教育関連、⑤オートメーションでならなければならない理由、⑥システムでのアッセイセットアップ、⑦理想 or 未来のHTS システム)について、グループ内でディスカッションをした。最後に、2 つのグループ内で話し合ったことを共有して終了した。

【所感】

full automation を採用している参加者は少なく、機器を人がつなぐ部分的なautomation を採用している参加者が多かった。今後はマトリックスで条件を振る様な複雑な作業、精度を出すのが難しいアッセイ系など人間が行うのが難しいものを自動化したいとの意見があり、これまで自動化向けでなかった複雑&煩雑なアッセイ系を自動化していく流れを感じた。

HTS automation system 戦略といっても、HTS実施に投入可能な人員や装置規模にはじまり、多様なアッセイ系への対応、他部署と機器共有使用による効率化など、各所属機関の置かれている環境、状況によって求められているautomation system は様々であり、実際WS内でその違いを議論することで、自然とautomationにおける課題解決につながっていくと感じた。automation関係のワークショップは、4年ぶりの開催ではあるが、定期的に開催することが望まれる。

 

 


【Track 7】HTMS-WS ~発見!質量分析ってこんなことできるんだ!~

ファシリテーター:
小野薬品工業 松田 修一
塩野義製薬 石井 隆太
田辺三菱製薬 寺西 文恵
アステラス製薬 魚住 隆一
参加者22 名

ワークショップ当日の進行と時間配分

【はじめに】10分
・会の趣旨説明
・アンケート結果の紹介

【前半:日頃の課題解決】40分
・あらかじめ設定した4つのグループ(5-6人,ファシリテーターが1名ずつ)に分かれて,各グループで自己紹介
・どんなことにMSを使っているのか,とそれぞれの課題を共有・討議

【前半のラップアップと話題共有】10分
・グループの意見を集約し,各ファシリテーターが発表

【休憩】10分

【後半:MS×HTS の未来を語る】40分
・どんなことにMSを使ってみたいか,となぜ使えていないのか?を全体で討議
・既存技術と既存技術ではできないことに分けて議論

参加者および議論の概要

本WSの参加者は7割以上がスクリーニング経験者,8割以上が質量分析経験者であった.専門性がある程度共通している一方で,質量分析の用途は,HTSやBiophysics,薬物動態試験,天然物,低分子・高分子の定性・定量など多岐にわたっていた.また,質量分析機器メーカーや解析ソフトベンダーからも参加があった.

前半の議論では,各参加者が抱える日頃の悩みについて,少人数のグループで議論がなされた.話題は各種試験の高速化,解析の効率化,専門家の育成や機器管理についてであった.また,共通の課題として,導入のハードルの高さ,つまり,どうやって高額な質量分析システムの必要性を社内に認めさせるか,ということが挙げられていた.解決策としては,高い専門性を持ったCROを利用し成功事例を作ることや,将来的には,共用可能な質量分析技術のプラットフォームを設置することなどが挙げられていた.

後半の議論では,発展的な内容を扱った.質量分析の良さである多因子の同時測定をHTSに活かすことができないか,といったことや,近年開発が進んでいる高速MSを用いて測定時間を短縮し,現在数台で行っている業務を1台にまとめて効率化・省コスト化することができないか,といったことを議論した.

所感と今後の課題

様々な背景を持った質量分析ユーザーが参加し,実施しているアプリケーションの内容も多種多様で,質量分析の有効利用にはまだまだ拡がりがあることを感じることができた.参加者の方々にとって,本WSで見聞きしたことで,持ち帰って実践できることや,今後の業務に活かせる情報があったのであれば幸いである.

反面,バックグラウンドの多様性から,参加者同士でイメージを共有するのに時間がかかり,議論もどこか抽象的になりがちで,「MSでどんなことができるんだろう?」という参加者からの問いを充分に消化できていなかった印象がある.情報の共有であれば話題提供などの講義形式に,発展的な議論であれば参加者のニーズや背景に合わせたグループ形式とするなど,会の進行に改善の余地があると感じた.今後の課題としたい.

 

 


【Track 8】表現型創薬(Phenotypic drug discovery:PDD)の可能性と課題、 スクリーニング戦術ならびに戦略を考える

【概要】

表現型創薬(Phenotypic drug discovery:PDD)を担当しており、PDD flowのいずれか の過程に課題を抱えておられる方々を中心にご参加いただいた。アイスブレイクの目的も 兼ねた名刺交換を参加者全員で行った後、企業研究者、アカデミア研究者が均等になるよ うに6-7名で5グループにわかれ、事前アンケートにて票や意見の多かった、①表現型ア ッセイ系構築、ヒット化合物選定 ②標的同定 ③PDDの可能性、今後の展望 の3議題 について議論を行った。また、議論を進めるにあたり、ファシリテーター(河邉、船田) から事例紹介を行い、理化学研究所笹川先生からはPDDへの応用が期待される技術として 超多検体RNA-seq法についてご紹介いただいた。

【表現型アッセイ系構築、ヒット化合物選定について】

構築難易度が高く、スループットが低い、疾患表現型アッセイ(例 iPS由来細胞を用い たHCS)を用いたスクリーニングを行う機会が増えており、ライブラリーの選択(small size) とヒット化合物のchemical spaceを効果的に拡大する手法の整備が求められている印象 を受けた。chemical spaceの拡大については、構造からだけではなく、HCAなどの生物活 性をもとに拡大する手法の整備が有効であるとの知見が蓄積しつつあり、AIを利用した画 像解析をうまく取り込む必要があると考えられた。また、低分子化合物ライブラリーだけ ではく、Functional genomicsライブラリー(si/shRNA, CRISPR-Cas9)のスクリーニン グを実施することで、新規ターゲットを見出し、druggabilityの低いターゲットに対して、 様々なモダリティを検討していくこともPDDには重要ではないか?との意見もあり、重要 な概念であると考えられた。

【標的同定について】

Phenotypic screeningで見出されたヒット化合物の標的同定については、過去の研究 会でも議論されているが、その必要性の判断も含め、課題を抱えているとの意見が非常に 多いプロセスである。安全性、メカニズムを予測するために化合物最適化と並行して標的 同定を進めることが重要との認識はあるが、成功確率が低く、標的同定なしで進める方法 論や新たな手法を議論したいという意見が多かった。また、所属機関で方針は異なるが、 作用機序既知化合物やCellular profilingを利用した標的同定に関しては、phenotypic screening flowに組み込まれ、成功事例が蓄積されつつある印象を受けた。今後、これら 既知情報を利用する手法と、従来のChemical proteomicsだけでなく、超多検体RNA-seq 法やFunctional genomics(CRISPR-Cas9)など新たな技術を利用した複数の手法を組み 合わせることで、標的・パスウェイの予測、同定を進める必要があると考えられた。

【PDD の可能性、今後の展望について】

PDDが有効な創薬手法であると認識しているものの、自社のみでは解決できない複数 の課題に直面しており、必ずしもPDDに対して明るい展望を持っている参加者が多く はない印象を受けた。アンケート結果でも、PDDの今後について一定数継続という意見 に対し、増加する、減少するという答えも同数おり、PDDに対する考え方が多岐になっ ている事を示していた。特に、臨床情報や病態とのリンクがあり、かつ競争力のある表 現型をどのように見つけ検証するのか、患者層別化バイオマーカーの探索・同定、動物 モデルの代替法としてのiPS技術の利用、などは企業単独では困難であるとの意見が多 く、国内においても産官学が連携し(コンソーシアムなど)、プラットフォーム整備を 進めることがPDDの活性化と成功に必須であると考えられた。今後、本ワークショッ プの議論を発端として更なる連携が模索されることを期待している。

 
 

【Track 9】HT-ADMET

ファシリテーター:
宮本 れい(アステラスリサーチテクノロジー)
小島 好美(小野 薬品)
参加者 30 名

昨年同様、全体セッション1回とグループセッション2回に分けてワークショップを行っ た。

全体セッション~ニューモダリティ

近年、創薬が核酸、抗体、ペプチドなどの中分子、高分子にシフト傾向にあるなか、ADMET においてもこれらの評価ニーズが高まっている。そこで本年は全体セッションにて「ニュ ーモダリティ」を取り上げた。小講演として中外医科学研究所の吉成 清さんに「最近のモ ダリティについて」をご講演頂いた。事前アンケートで参加者にNew modalityのADMET評 価について伺ったところ、自部署または社内他部署で実施している方が約7割と多く各社 のADMET評価項目、課題について全体で意見交換を行った。

グループディスカッション①~戦略・運営

事前アンケートの内容を基に以下の小グループに分かれて議論し、各グループでの議論内 容を全体で共有した。

・ADMET評価戦略
・分析の効率化・高質化
・Data信頼性担保

グループディスカッション②~ファンクションごと

ADME系、DDI系、Tox系のグループに分かれて①と同様、議論後、各グループでの内容を全 体で共有した。

 

 
 

【Track 10】Biophysics

ファシリテーター:
渡邉,長門石

本年のテーマは「Biophysical methods ―オリジナルのBiophysical method リストを完成 させよう―」に設定し,各種Biophysics技術の長所,短所,特徴を改めて整理するという 企画を行った.取り上げた技術はSPR, ITC, MS, NMR, MSTの5つであり,企画の趣旨から 参加者は各技術のいずれかについて一定以上の経験があるユーザーに限定した.

WS前半ではグループに分かれて議論を行い,WS後半では各グループにおいて議論されたこ とを共有し,相互に意見交換を行った.

参加者の多くがSPRの使用経験があったためか,リストを作成する際にはSPRを比較対象 とした意見が多かったように感じた.新規の技術であるMSTに対してはもちろん注目度が 高かったが,これまでWSの中であまり取り上げたことの無かったNMRやMSについても活 発な議論がなされた.

興味深かったのはNMRやMSユーザーが興味のある技術はSPRという意見である.WS参加者 はSPRユーザーが最も多かったものの,NMRやMSユーザーは逆にSPRを使用した経験が少 ないとのことであった.今でこそBiophysicsという分類が可能であるが,もともとSPR, NMR,MSは異なる分野に属する機器であったと認識されていたのではないか.一方でSPRと ITCがそれほど違和感なくBiophysicsと分類できているのは,これらを相補的に活用して いくという啓蒙活動の効果があったと考えられる.

新規技術の台頭には目覚ましいものがあるが,これらの技術を横断的に使用できる人材は まだまだ少ないと考えられる.今後もWSやSIGを通じて各種Biophysics機器の相補的な 利用について議論することで,このような人材育成の一助としたい.

以上

 

 

【Track 11】ヒット選抜(Screening Cascade)

ファシリテータ:
出井 晶子(田辺三菱製薬)、村越 路子(第一三共RDノバーレ) 参加者25名

1.WS「ヒット選抜」の目的

創薬プロジェクトにおいては、どのような化合物を取得して創薬につなげていくか、という戦略のもと に各分野の担当者が集まり、プロジェクトを推進しています。スクリーニングフロー構築は、スクリーニ ングを実施する際目的にあったプロファイルを持つヒット化合物を取得するために重要な戦術となります。 にもかかわらず、これまでのスクリーニング学研究会では、ランダムスクリーニングによりヒット化合物 を取得・選抜する方法論について議論するWSがありませんでした。そこで、第9回の本会においては、 スクリーニングフローについて深く討論することを目的として、WS「ヒット選抜」を新設させていただき ました。

2.WSの進行と議論内容

(1)アンケート集計結果の共有
最初に、事前アンケートの集計結果を皆さんに提示しました。アンケートは、参加者のバックグラウン ドを把握し、ヒット選抜に対して各人が感じている課題を抽出することを目的としたものです。アンケー トの結果から、HTS、薬理、創薬化学、ライブラリの分野から幅広くご参加いただいていることが確認で きましたので、所属機関や業務内容ができるだけ重ならないメンバーでグループを構成して後半のグルー プワークを行っていただくよう準備いたしました。

また、アンケート結果から、特定の化合物評価手法ではなく、酵素アッセイやフェノタイプアッセイの スクリーニングフロー構築に課題を持っておられる方が多いことがわかりました。そこで、仮想のプロジ ェクトを設定し、ランダムスクリーニングを実施するためのスクリーニングフローについて考案していた だくことをWSの主幹としました。

(2)グループディスカッション
グループディスカッションにあたり、参加者がディスカッションを円滑に進められるよう、最初に例題 を提示し、用語の定義や説明を行いました。例題では、架空の酵素A阻害剤探索プロジェクトで、先行品 と差別化できるリード化合物を取得するためのクリーニングフローの一例を示して解説しました。説明に 使用したスクリーニングフローは、事前にファシリテーター2名が考案したものです。例題に対する質疑 応答も行いました。

続いて、3つのグループに分かれてファシリテーターの準備した2つの課題について、目的とする化合 物を取得するためのスクリーニングフローについて議論していただきました。グループディスカッション では、ディスカッションを通じた横のつながりを形成することも目標のひとつとしており、約60分間で自 己紹介とラウンドテーブルディスカッションを行っていただきました。最後に、各グループからディスカ ッションした内容をご発表いただき、参加者全員で討論しました。グループでは、より議論を進めやすくするために、課題に対して具体的な条件(ライブラリ数など)を設定するなどの工夫もなされていました。 また、異なる分野の参加者が集まっている利点を活かし、化学やADME-Tはどのタイミングで参画するの が良いかなどの議論も行われました。

ファシリテーターの予想以上に、テーマに対し深く意見交換をしていただいた結果、いずれのグループ もWSの時間内では準備した課題のうち1題しかフローの考案が終了しませんでした。その分、求める化 合物を取得するためには、ゴールとなる化合物のイメージを明確にすることが重要だということに気づい ていただけたのではないかと思います。
 

3.まとめ

今回のWSのまとめとして、以下を提示しました。

  • プロジェクトとして取得したいのは、どのような化合物ですか?
  • スクリーニングフローに入れるアッセイ系の、材料や反応時間、化合物濃度などは、取得したい化合 物像に合致しますか?
  • スクリーニングフローの順序は適切ですか?アッセイ系の順序が異なるだけでも、取得できる化合物 は異なります。

参加者が25名と比較的少人数であり、またグループ単位で少人数でのディスカッションを行ったために、 参加者が発言しやすい環境にあったように感じています。共通の問題を共有化し、議論し、解決していく 中で、これからも継続して交流できる『つながり』が形成できたのではないかと思います。

以上

 

 

【Track 12】2022年以降の低分子創薬(Small Molecule Drug Discovery beyond 2020)

昨年の産官学連携WSとスクリーニング戦略WSの合同企画で開催した。ファシリテータから“低分子 創薬の将来環境に関する概要”と”AMEDでの取組み(Cicle、BINDS、DISC等)“を話題提供して、 続いて事前アンケートの結果を参照しながら以下の4テーマについて議論した。

Ⅰ.化合物ライブラリの在り方、Ⅱ.HTSの進め方、Ⅲ.HTSフォローアップ、Ⅳ.HTS戦略
参加者はファシリテータ(4名)を含め28名で、4つのグループ(6名)に分かれて上記テーマについて 順次議論し、討議の最後に各グループの議論概要を発表してWS全体で共有した。いろいろなコメント が出たが、2020年以降の低分子創薬の形は今と同じではないとの予測から、さらに連携強化が求めら れるという見解は一致していた。

Ⅰ.化合物ライブラリの在り方

【議論キーワード】“化合物ライブラリの共同利用、共同保管の推進”、“共同保管化合物のアカデミア 創薬への協力”

【議論コメント】「各社のライブラリは重なりが少ないので、化合物交換あるいは共同利用の意義は高 い」、「共同保管・利用のデメリットとして、タイムロスや権利関係が挙げられるが、一方効率化向上のメ リットは感じられる」

Ⅱ.HTSの進め方

【議論キーワード】“独自路線からの脱却と共同実施”、“一部のCRO化(とがった技術を持つCROが 中心にHTSを実行する)”

【議論コメント】「一部のスクリーニング系交換によるHTS実施もあってよい(例:iPSに強みを持つ会 社と共同研究等)」、「自社持ちはコストの問題(新規購入・リプレイス・維持費)がボトルネックとな っている」、「HTSの内製化は困難であり、一部のCROは必要である」、「HTS稼働率の低さが問題」、 「社内で不十分な化合物ライブラリや保有していないアッセイ技術に期待して外へ委託する」

Ⅲ.HTSフォローアップ

【議論キーワード】“高次評価はどうするか?独自の評価系をどうもち、どこまでやるか?(iPS,フェノテ ィピック、評価フローの改定など)”

【議論コメント】「HTSで獲得したい化合物のプロファイルを明確にして、多数のカウンターアッセイなど用 意できるとよい」、「高次評価系を構築する部署はテーマ発案部署やHTS担当チーム等、各社事情に より様々」、「SARとは違う視点でケモインフォの専門家による絞り込みができると有効ではないか」

Ⅳ.HTS戦略

【議論キーワード】“アカデミア発の魅力的なターゲットや技術が日本で発掘できるか?”、“創薬研究の 海外移転、CRO活用の流れの中でアカデミアと自社がどうやって協力していくか?”

【議論コメント】「アカデミアの一部にはまだ学会発表や論文などの成果を重視する傾向はあるが、社会 実装という視点でゴールを企業と共有できている世代もある」、「産官学連携において窓口担当者/コ ーディネーターにより言葉の違いをつなぐ重要性、あるいは彼らの熱意の大切さを感じる」、「DISCで採 用されなかったアイデアを再活用できる仕組みがあるとよい」

 

 

【Track 13】天然物創薬で、「こんなことできたらいいな」を語る

ファシリテーター:
永井 浩二 (大鵬薬品工業株式会社)
村松 康範 (第一三共RD ノバーレ株式会社)
奥田 彰文 (エーザイ株式会社)

天然物創薬をテーマとしたワークショップは2016年度、2017年度に引き続き3度目の開 催である。昨年度は「天然物スクリーニングにおけるヒット後の創薬展開を考える」と題 し、天然物創薬の抱えるヒット後展開の課題を抽出した。そこでは、「スクリーニングの機 会が減っていること」、「誘導体展開が難しいこと」等が挙げられた。それらの対策として は、企業、アカデミア等のニーズを顕在化させた上で「組織の壁を超えたマッチングが有 効である」との意見が出された。

今年度のワークショップでは、現状の難局を乗り越えるために既存の研究手法の延長線上 ではない新しい発想が必要と考え、突拍子もない新奇なアイデアを参加者全員から出して もらう企画とした。なお参加者は総勢22名であり、その内訳は企業、国、アカデミア等で あった。

本ワークショップではその趣旨説明の後、昨年度と同様に参加者全員による自己紹介の時 間を設けた。各参加者がどういう興味をもって本WSに参加したかなどを語っていただい た。続いて、第一部では昨年度からの議論の続きとして、ヒット後の創薬展開において解 決したい課題や問題点をアンケートの結果を踏まえて参加者に共有した。項目としては「精 製・構造決定」、「供給、その他」、「合成・最適化」とし、ファシリテーターを中心に議論 を行った。

第二部としては、「こんなことできたらいいな」という天然物の未来の夢をテーブルごとの 4人(あるいは3人)のチームに分かれ、語り合ってもらった。その後、各テーブルの代表 者からそれぞれのチームで決めた最もよかった「夢」について発表してもらい、最後には 参加者全員から最もよかったチームはどこであったか、投票してもらった。

【各チームから発表された「夢」について】

Aチーム:体内生産型プロドラックの創薬:体の健康状態に応じて体に投与された菌が有用 天然物を生産。健康年齢を維持する。

Bチーム:夢の掃除機、夢の炊飯器:土を吸い込むと新しい化合物生産菌を自動で選別し内 部の袋に集めてくれる。それを炊飯器に投入すると新規化合物生産菌が休眠遺伝子も覚醒 して二次代謝物を自動的に生産してくれる。

Cチーム:微生物によるありとあらゆる誘導体展開:安価な低分子化合物を原料としてスー パーな菌に投入すると、望みどおりの誘導体を生産することができる。

Dチーム:らくらく天然物創薬:メタゲノム解析→バーチャルスクリーニング→合成生物 学→wetでの活性確認、により天然物創薬を飛躍的に効率化する。

Eチーム:休眠遺伝子からお宝発見、夢のスーパーホストで大量生産:休眠遺伝子を覚醒さ せ、スーパーホスト株により新たな活性物質をどんどん生産する。

Fチーム:コンビケムファクトリー:動植物由来希少化合物を生合成する遺伝子について遺 伝子組換えにより微生物内で合成させる。High-throughputに誘導体を合成できる。 投票の結果、最優秀賞としてBチームが選定された。 現実の課題とその解決策を共有するとともに、夢を語り合ってもらうことで、参加者の天 然物創薬に対する期待や意欲が高まったのであれば幸いである。

以上

 

 

【Track 14】HCSにおける画像解析の可能性

【概要】

ベンダーを含む約30名にご参加いただいた。ご経験年数およびご所属(ベンダー、アカデミア研究者、企業研究者)が均等になるよう3グループに分かれて議論を進めていただ いた。議論全体を①画像解析の課題と②マルチパラメーター解析にわけ、順にディスカッションを行なった。各ディスカッションの始めに田辺三菱製薬株式会社・大野研氏よりア ンケート結果の振り返りを、続いて東京女子医科大学・田邊賢司氏より各テーマに関連した小講演(①HCSにおける画像数値化、②マルチパラメーター解析の実例紹介)を行い、そ れぞれのディスカッションへの話題提供とした。テーマ①では、簡単な自己紹介と現状の画像解析で困っている事、他の研究者に聞いてみたい事などを自由に意見・質問していた だき、同グループの経験者から解決方法を提案、助言していただくスタイルをとった。テーマ②では自由討論を主とし、マルチパラメーター解析や機械学習の意義・手法、deep learningの活用方法などについても意見交換を行った。

【画像解析の課題】

アンケートでは、約半数の方が現在の画像解析ソフトに満足していると回答された一方で、思うようにパラメーターを抽出できていないという回答も多く見られた。ディスカッ ションでは、目視で確認できる特徴を数値化しても期待する結果が得られず、画像解析で得られた特徴量そのままを生物学的に意味のある特徴量として処理するのは難しいのでは ないかという意見が複数挙がった。一方、フリーの画像解析ソフトを検討することはあるものの、その導入がうまくいかず、途中でやめてしまったという意見も複数聞かれた。全 体として参加者の経験の差が大きく、全員での議論が難しい面があったが、経験年数が短い参加者にとっては様々な経験談や助言を聞くだけでも意義は高かったとの感想が聞かれ た。

【マルチパラメーター解析】

参加者の大半は解析に2-3パラメーターのみを使用しており、10以上のマルチパラメーター解析については未経験な方が多かった。ディスカッションでは、パラメーター毎に異なる結果が得られることも多く、ヒット選抜の際に判断が難しいとの意見が出た。想定していなかったパラメーターで変動がみられた場合の扱いに悩む声も聞かれた。機械学習や deep learningへの期待の声も挙がったが、特にdeep learningに関しては解析結果がblack box化することに対する懸念も大きいようだった。小講演では数百以上のパラメーターを用 いたMOA解析の実例が紹介され、実験条件を多少変えても結果の判定に大きな差が出ないことも示された。参加者にとって、これからの解析に関する解決策やヒントを得られたのではないかと思う。