ファシリテーター
堀 浩一郎 (日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所)
対象者
HTSの実担当者・マネージャー、データ解析・管理担当者を想定する。
内容
このワークショップでは主に以下の話題について議論したい。
- スクリーニング結果からのヒット選抜手法
- HTS to ヒットで使用されるデータ解析手法
- 蓄積されたスクリーング結果の副次的活用法
High Throughput Screening(HTS)ではライブラリー化合物の増加に伴い、プレートのミニチュア化、検出機器の高精度化、分注の自動化対応、新しい測定技術など様々なアッセイテクノロジーが投入されてきた。しかし、アッセイ結果からのヒット選抜手法についてはHTS創成期よりそれほど大きな変化はなく、いまだに活性上位から一定数の化合物を選抜する「TopX方式」を採用しているところが少なくないのではないだろうか?
そこで統計的な考え方を組み込んだヒット選抜手法の事例を紹介する(事例紹介1)。
一方で「HTSからはろくなヒット化合物が出ない」などという心ない噂を時々聞くことがある。本当にHTSからは「良い候補化合物」は見いだせないのだろうか?良い化合物を確実に見出すためにはどうすればよいだろうか?
HTSは別名ランダムスクリーニングと呼ばれているように、雑多な化合物集団から薬の候補になりそうな原石を探す作業になる。そのため、原石としてふさわしいケモタイプを早期に見極めることで、その後のリード最適化のプロセスの確度と効率を上げることができる。そのような取り組みの事例を紹介する(事例紹介2) あわせて、ヒット選抜の中で有益なデータ解析手法やHTSデータベースの活用法について議論したい。
事例紹介1: 「ランダムスクリーニングにおける統計解析的手法導入の試み」
興和株式会社 東京創薬研究所 創薬探索研究部 リード探索グループ 西山達明様
研究所では様々なプロジェクトでランダムスクリーニングをスクリーニングの起点としている。ターゲットバリデーションが進んでいて、生物学的に『これくらいの活性値を示す化合物ならば、動物モデルでも効果が見込める、ヒトの試験でも効果が見込める』という情報が既知の場合にはランダムスクリーニングの1次スクリーニングでも化合物選択における選択基準は生物学的な情報から決定することができる。しかし、ランダムスクリーニングを起点とするプロジェクトの中にはターゲットバリデーションのための十分なデータが社内的にも既報でも存在しない場合がある。新規ターゲットの場合などはその典型例となる。このような場合にはどの程度の活性があれば今後の展開に十分な活性なのかを生物学的に考察することができず、1次スクリーニング段階での化合物選択基準は生物学的に決定することができない。その結果、非常にあいまいな基準のまま化合物選択を行うことになる。このような場合に、統計的な視点から基準を設けることを試みた例を報告する。
事例紹介2: 「LEを考慮したヒット選抜の試み」
日本たばこ産業株式会社 医薬総合研究所 堀 浩一郎様
HTSのヒット選抜にLigand Efficiency(LE)を適用する試みについて報告する。LEはもともとはFragment Based Drug Discovery(FBDD)の化合物最適化プロセスで使用されてきた活性指標であり、化合物の単位サイズあたりの活性値になる。HTS用化合物ライブラリーの拡充に伴い、分子サイズのバラエティが広がるにつれ、最終的に選ばれるヒットがサイズが大きい化合物になるケースが多くなってきた。本トレンドを改善する目的で、活性指標にLEを導入した際の方法論およびその経過・結果について報告する。