1. Type IIおよびType IIIキナーゼ阻害剤の特性評価に適した、ワンステップで汎用性の高いLanthaScreen BindingAssay

 

キナーゼを標的とした創薬が活発な近年、不活性型キナーゼに優先的に結合する有望な治療薬への注目が高くなってきている。具体的には、Type II阻害剤は、キナーゼのATP 結合部位(不活性状態で露出)に疎水性ポケットが加わったDFG-out 配座に結合するが、このような結合モードを持つ化合物の例としては、グリベック、ソラフェニブ、BIRB-796 などがあげられる。このような阻害剤は、ATP 結合部位にしか作用しない標準的なTypeI の阻害剤と比べて、選択性がより向上する利点を有している。一方、キナーゼ活性アッセイは簡便かつ低コストではあるが、これらは活性型キナーゼからのシグナルを測定するよう設計されており、Type IIType IIIの阻害剤の特性評価には適していない。しかし、酵素反応ではなく、結合した化合物を直接測定する方法(Binding Assay)であれば、活性型キナーゼに対する薬剤にも、不活性型キナーゼに対する薬剤にも、効果的なAssay Toolとなる。そこで、TypeIとType IIまたはType IIIの阻害剤の識別・特性評価・判別を簡便に探索するために、新たな結合アッセイのプラットフォームであるInvitrogen™Lanthascreen™Eu Kinase Binding Assay (KBA) を開発した。このアッセイでは、キナーゼ阻害剤にInvitrogen™Alexa Fluor™647 色素がコンジュケートした「Tracer(トレーサー)」をキナーゼ結合のコントロールとして用いる。そしてTracerとキナーゼとの結合は、ユウロピウムで標識された抗タグ抗体(Eu-Ab)を加えることで検出する(Mix-and-Read)。TracerおよびEu-Abがキナーゼに結合することで、高いFRET シグナルが得られるが、トレーサーと評価キナーゼ阻害剤とが置き換わった場合には、FRET シグナルは得られない。本発表では、TR-FRET におけるヒトキナーゼに対する選択的結合プローブ、および選択的標的に対する阻害剤の妥当性評価について広範に説明する。

 

2. 化合物の毒性予測を改善するための新提案: PrestoBlue/CyQUANT Directコンビネーションアッセイを用いた細胞生存率測定試験

in vitro の細胞毒性アッセイは、ここ数十年、世界中の研究室で、化合物の毒性を判定するために使用されてきた。しかしながら、このようなアッセイの性能は、未知の分子のin vivo での毒性について予測するには、不十分であった。過去に行われたin vitro の細胞毒性アッセイが、in vivo での毒性を予測するうえで信頼性に欠けるという理由は、いくつか挙げられる。例えば、ATP 測定(代謝活性評価)や代謝酵素測定といった単一のエンドポイントを細胞の生存率試験に用いた場合、偽陽性や偽陰性を示すデータの発生率が高くなる。Invitrogen™ PrestoBlue™/CyQUANT™Direct 毒性試験は、直交的な仕組みを採用することで、単一のパラメーターに基づくアッセイと比べて、より厳密な生存率の測定を可能にした。PrestoBlue試薬が生細胞の減少に反応し、CyQUANT Direct アッセイにより細胞膜が損なわれていない生細胞の数が分かる。このアッセイでは洗浄操作が不要なうえ、Bottom-Read式の蛍光プレートリーダーを使用して、96 wellまたは384 wellマイクロプレートを利用することで、多重化・自動化アッセイが容易に行える。加えて重要なことは、このアッセイは低コストである。また、PrestoBlue/CyQuant Directコンビネーションアッセイは、化合物の識別能が向上して、老化した細胞と死細胞を判別することが可能である。

3. 基礎およびトランスレーショナルリサーチにおいて、ヒト多能性幹細胞(hPSCs)から心筋細胞に分化するための、シンプルでGMP 基準に準拠した培養システム

ドナーまたは特定疾患患者の多能性幹細胞(PSC)から心筋細胞を生成する培養システムがシンプルかつ確固たるものになれば、基礎およびトランスレーショナルリサーチに使用するのに、貴重で安定した細胞リソースとなると期待されている。しかしながら、現在の手法では、生成される心筋細胞の純度にばらつきがあり、生成に長時間を要することで、均質な心筋細胞を得ることができないことが問題になっている。

そこで、弊社では、無血清で、異種由来成分を含まない、GMP基準に準拠した培養システムを開発した。このシステムはスケーラブルで、大量の心筋細胞を生成することが可能である。生成された心筋細胞は、そのまま維持も冷凍保存も可能である。

分化の過程においては、10 日ほど経過すると拍動細胞が観察でき、14 日目までにはシンシチウムが形成される。0 日目から14 日目までの分化期間で、細胞数は100 倍以上にも増加する。フローサイトメトリーによる定量結果では、90% 以上のトロポニンT タイプ2(TNNT2)免疫反応性心筋細胞が検出された。TNNT2 免疫反応性細胞を高い割合で得るためには、PSC の細胞株に依存した最適な播種密度が肝要となる。PCR 法およびRNA シーケンシングによって、中胚葉・心臓中胚葉・matureな心筋細胞遺伝子の発現、および心房遺伝子・心室遺伝子・洞結節遺伝子の存在が確認された。免疫細胞化学的手法では、心筋細胞の分化初期および分化後期マーカーの発現が確認された。カルシウムフラックスアッセイおよび微小電極アレイの結果は、心臓作用薬に対して感受性を有することが知られており、心毒性評価においてその有用性が証明されている、電気的にアクティブな心筋細胞の存在を支持するものであった。