日本たばこ産業株式会社
医薬総合研究所
生物研究所
主任研究員
薬学博士
山本 純 様

要旨:

創薬研究で使用する低分子化合物の溶媒として広く利用されているDMSOは空気中の水分を吸収しやすいため,開封した溶液サンプルは徐々に吸湿し,化合物の溶解性・安定性が低下することが知られている。この問題を軽減するため,JTでは以前よりHTS用化合物の保管用として384ウェルプレートや384チューブを使用し,濃度・液量を複数種類で複数コピー調製して,凍結融解や開封回数を減らす運用をしてきた。

しかしながら,HTS用化合物コレクションが年々増加することに伴って保管用プレートを調製するための消耗品代やワークロードが増加し,保管エリア(手動冷凍庫や冷凍自動倉庫/Liquid Store)の空きスペースが限界に近づいてきた。さらに,HTSのヒット選抜過程において,従来にない多様なフォーマットでアッセイしたいというニーズが高まり,所有するチップ式分注機では対応しきれなくなってきた。

そこで,2014年の夏から秋にかけて,溶液サンプルの濃度や液量のバリエーションを減らして保管エリアの空きを確保するとともに,非接触微量分注機Echo 555を導入して多様なアッセイプレートを提供する体制を整えた。一方,溶液プレートのバリエーションを減らすことは,プレートを何度も開封する運用に切り替えることにつながるため,溶液の吸湿対策を再検討する必要が生じた。そこで,調製するプレートの種類に応じた2種類の防湿対策を施した。

上記の化合物管理体制を開始して1年が経過するなかで見えてきた“現実”と課題,そして,スクリーニング化合物管理システム「SCMS/JTCL-CATS」についても紹介する。