ファシリテーター:堀 浩一郎 (日本たばこ産業医薬総合研究所 生物研究所)
永田 勉 (第一三共㈱ 研究開発本部 創薬化学研究所)
「リード化合物はどうあるべきか?リード化合物に求められるProfileとは?」
リード化合物をHTSから求める場合に、主活性はもちろん一般的な特異性、ファミリーターゲットとの活性差、毒性、物性、ADMETプロフィール、合成展開性、特許性など、さまざまな化合物が持つ特性を考慮して選抜する必要がある。しかし実際には主活性や特異性に注目するあまり、物性の悪い化合物やADMETプロフィールの悪い化合物しか残らず、最終的にプロジェクトとして頓挫してしまうことが少なくない。Hit to Leadのプロセスでは当たり前にやっているMulti Parameter Optimizationの考え方をHTSにもっと加えることはできないのか?そもそもリード化合物の定義とは何か?リード化合物はどうあるべきかについて分科会全体で議論したい。
事例発表
「フラットランドも悪くない!?リード化合物に求めるプロファイル」
第一三共(株) 研究開発本部 創薬化学研究所 永田 勉
近年の創薬化学において、「化合物がドラックライクであるか否か?」の判断基準として芳香環の数が話題に上っている。すなわち、芳香環の数が多い化合物(=フラットランド)は医薬品の開発において成功確率が低くなるので、なるべく芳香環は減らすべきとの報告である。しかしながら、芳香環のメリットとして、合成が比較的容易であり不斉炭素を用いずに分子構造が固定化できる点は見逃せない。特に新規の標的蛋白に対してHTSを行う場合には、むしろある程度の芳香環の数は許容して高活性なリード化合物をいち早く取得し、その後の合成展開でフラットランドからの脱出を考えればいいのではなかろうか。一方、芳香環の数以外のプロファイルに関しては、なるべく脂溶性が低くかつ分子量が小さいリード化合物であれば、ADMEプロファイルで悩まされることも少なく合成展開性も高い。最近の論文情報を踏まえながら、「リード化合物に求めるプロファイル」について分科会で議論したい。