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Design of a screening cascade for desirable hits finding)

ファシリテーター

日本たばこ産業株式会社            大原 康徳
東京大学 創薬機構                   今村 理世
田辺三菱製薬株式会社               出井 晶子

 

参加者30名

  • 製薬企業 21名
  • 大学など研究機関 5名
  • ベンダー 4名
     

募集要項

経験:経験不問・スクリーニングに興味のある方 
内容

  • ご自身が考えるヒット選抜や化合物の絞り込みフローに、疑問や不安を感じている方
  • 目的にあったプロファイルを持つ化合物を取得するための「化合物の絞り込み」にこだわりたい方
  • ケミスト(メドケム・ケムインフォなど)にとって魅力のあるヒット化合物とは何か、魅力あるヒット化合物を選抜するためにどのようなアプローチが有効かについて議論したい方

 

WSの進行と議論内容

1.事前アンケートの結果報告

  • 参加者の専門分野は,半数弱がHTSで,薬理や合成,化合物ライブラリ,計算化学など多岐にわたりました.また,参加者のランダムスクリーニング経験は,未実施の方から上級者まで様々でした.参加者の所属,専門分野,経験が偏らないよう,グループを4つに分けました.
  • 参加者が実施する化合物評価の方法は,酵素アッセイや細胞アッセイがそれぞれ1/3ずつを占め,BiophysicsやADMET評価なども含まれていました.化合物絞り込みのスクリーニングフローは,約6割の参加者が自身で組み立てた経験があり,その際にフェノタイプアッセイや酵素アッセイ,蛋白間相互作用アッセイでスクリーニングフロー構築に課題を感じていることがアンケート結果からわかりました.
  • スクリーニングフローの組み立てにおいて,重要視する項目はvitro活性の強さ(10点中8.2点)と擬陽性排除(8.0点)であることは参加者間で共通していました.一方,その次に重要と考える項目は専門分野によって異なりました.専門分野がHTSの方は,特異性や選択性を重視し,薬理ではvivo薬効の強さ,合成はTarget Engagementや構造を重視していることがわかりました.
  • アンケート自由記載では,スクリーニングフローの組み立てにおいて難しいと感じていることを記載していただきました.大別すると「HTSおよびスクリーニングフロー」「擬陽性排除」「クライテリア設定」「懸念構造の判断」「メドケムとの連携とタイミング」「Biophysics」「Hit ExpansionおよびHit to Lead」に分類できました.

 

2.グループディスカッション

  • アンケートの結果を反映し,ランダムスクリーニングによる酵素阻害剤(生活習慣病のキー分子となる架空の酵素)探索のためのスクリーニングフローをグループ内で構築し,グループごとに発表していただきました.主薬効のクライテリア,擬陽性排除の方法,メドケムに化合物を開示するタイミングなどについても議論内容として含めていただきました.
  • 議論の進め方として,取得したい化合物像を明らかにした上でPrimaryHTSのアッセイ系を設定してもらうよう配慮しました.スクリーニングフローは,事前に準備した項目の札を配置し,具体的なアッセイ条件を追記してもらうこととして,議論が進めやすくなるよう工夫しました.また,WS内で議論する際の用語は,各社(各個人?)によって意味が異なる可能性があるため、事前に定義して,印刷物を各グループに配布しました.
  • 4グループに発表いただきましたが,1グループのみPrimaryHTSに発光系のCell-basedアッセイを設定し,フローを構築されていたのが特徴的でした.Cell-basedアッセイにすることで,標的分子が本来の構造をとるという発想に基づくものでした.他の3グループは,いずれもCell-freeの酵素アッセイを設定していましたが,発光とMSで検出系は異なっていました.Cell-freeのアッセイ系を志向した背景には,酵素ファミリー間の選択性や種差評価を比較に評価できることを挙げていました.
  • PrimaryHTSの検体濃度は,3, 10, 30 uMとグループにより最大10倍異なったのもとても興味深い点でした.先行品の有無やヒット化合物取得可能性を考慮し,各グループで検体濃度が設定されていました.さらに,再現性試験やカウンター試験のn数や濃度設定も,グループにより異なりました.参加者のみなさんには,取得したい化合物像の中でどの要素を重視するかによって,スクリーニングフローの順序や選択項目が異なることを実感していただけたのではないかと考えています.
  • また,今回は先行品があるという設定のもとでスクリーニングフローを考案していただいたため,いずれのグループでも最初から先行化合物のプロファイリングを行うことをタスクとして提示され,先行品との差別化につながるアッセイ系をスクリーニングフローに組み入れることを考えておられました.
  • 昨年度のWSでは,質疑応答の時間が十分に取れなかったため,今年度は時間配分を考慮しました.4つのグループの発表が終わった後で,全グループに対する質疑応答を行うことで,全体を比較することができたのは良かったと考えています.具体的には,なぜCell-basedアッセイを選択したのか,どのような視点でPrimaryHTSの検体濃度を設定したか,PAINSフィルターをどの段階で適用するか,PAINSに該当する検体をどう取り扱うか,などの質問が挙がりました.

 

3.まとめ

  • HTSから創薬につなげていくためには,どのようなプロファイリングの化合物を取得したいのかをきちんと考えて,戦略的にスクリーニングフローを構築する必要があり,化合物の絞り込みにどんなアッセイ系をどんな順序で組み合わせるかが重要であることを共有しました.
  • スクリーニングフローは化合物探索戦略そのものであることから,実際のテーマを進めるにあたっては,テーマ課題との整合性,設定したスクリーニング系の妥当性(材料,反応時間,化合物濃度,クライテリアなど),使用するライブラリの数や内容,擬陽性排除方法の妥当性,カウンター試験とプロファイリング試験の位置づけ,スクリーニングフロー内での実施タイミング(実施時期)を,テーマに関わる各部署の担当者と事前に十分議論しておく必要があります.

WSの参加を通じて,多くの参加者の方にスクリーニングフローの答えは一つではないことを理解していただいたようです.自社でもスクリーニングフローについてしっかり考えるために,今回使用した札や題材を持ち帰りたいというご希望もいただき,参加者が主体的にスクリーニングフロー構築を実践していく機会につながったのではないかと考えています.