ファシリテーター

茶谷 昌宏 (昭和大学 薬理科学研究センター)
辻 直城 (第一三共株式会社)

対象者

アカデミア、製薬企業、ベンチャー企業等で、小型魚類であるメダカとゼブラフィッシュのWhole Organismsを用いた創薬研究に興味のある方。

内容

 近年、メダカやゼブラフィッシュがヒト疾患モデル動物として医学研究においても幅広く使われるようになってきた。これらは胚が透明で臓器の観察が容易であることからin vivoイメージングに強みを持つ。本ワークショップではWhole Organismsを用いた創薬研究としては初めてであることから、メダカやゼブラフィッシュの基本的な特長を事例とともに紹介し、共有することで、メダカやゼブラフィッシュをどのようにして創薬に利用できるか、実務的な観点やファシリティーの観点も含めてみなさんでディスカッションしたい。

事例紹介 

□ メダカの骨研究 -宇宙の先に見えるもの-

茶谷 昌宏(昭和大学薬理科学研究センター 歯学部歯科薬理学講座)

 メダカは江戸時代から観賞魚として日本人には親しみ深い動物であるが、2012年と2014年にはソユーズロケットによって打ち上がり、世界を代表する飼育実験が国際宇宙ステーション内で行われた。宇宙飛行士は微小重力空間で生活すると骨量が減少することが報告されており、骨代謝における重力の関与を解析するためにメダカが選ばれた。

 骨の動的な形成を見るために、骨を作る骨芽細胞と骨を壊す破骨細胞にそれぞれ別々の蛍光タンパク質を発現させるトランスジェニックラインを作製し、骨に存在する骨芽細胞と破骨細胞をリアルタイムに観察することが可能となった。さらに、遺伝子編集技術であるTALEN法やCRISPR/Cas9によって遺伝子欠損メダカを作製することで、ダイナミックな骨形成の制御メカニズムを見出している。

□ ゼブラフィッシュを用いた低分子化合物の薬理学的評価

辻 直城(第一三共株式会社 疼痛神経ラボラトリー)

 近年、ゼブラフィッシュは医学研究(ヒト病態の解析)、創薬研究(安全性試験、薬理試験、スクリーニング)の目的で幅広く使われるようになった。創薬スクリーニングにおけるゼブラフィッシュの強みは主に、in vivoスクリーニングが可能(細胞間、組織間相互作用も対象にできる)、in vivoイメージングが可能(生きた状態で臓器の観察が容易)である点であり、ツールがそろえば生理的な状態で培養できない組織、細胞の分子生物学的レベルの評価が可能となる。一方で、化合物スクリーニングに用いられるようになって日が浅いことから、その取り扱い、利用方法については十分な経験を積んでいない。

 本発表では、これまで報告されているスクリーニングを中心とした薬理研究の例を紹介する。さらに、現在直面している課題と取り組みの紹介を通じて、より効果的なゼブラフィッシュを用いた評価系についてみなさんと一緒に考えてアイデアを広げたい。