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Discuss novel future about drug discovery from natural product まとめ

 

第一三共RDノバーレ株式会社 村松 康範
Yasunori Muramatsu, Daiichi-Sankyo RD NOVARE Co., Ltd.

エーザイ株式会社 奥田 彰文
Akifumi Okuda, Eisai Co., Ltd.

 

天然物創薬をテーマとしたワークショップ(以下、WS)は4度目の開催である。昨年度、本WSでは天然物からの創薬を持続的に発展させるために、「こんなことできたらいいな」という夢を語りあった。今年度はその発展形として、昨年度の本ワークショップで挙げられた夢を深掘りし、それらを具現化するためには何が必要かを議論することとした。なお参加者は総勢16名であり、その内訳は企業、国、アカデミア等であった。

 

本ワークショップではその趣旨説明の後、参加者全員による自己紹介の時間を設けた。各参加者がどういう興味をもって本WSに参加したかなどを語っていただいた。これにより会場にある種の一体感が生まれた。続けて、参加者全員で現状の天然物創薬研究の課題についてざっくばらんに話し合った後、テーブルディスカッション「夢、その実現のために」へと移った。参加者の事前アンケートに基づき、昨年度挙げられた夢の中から「微生物によるありとあらゆる誘導体展開」と「休眠遺伝子からお宝発見」の二つを選定し、さらに上記の二つ以外を語り合いたい方のための「エキストラドリーム」を加えた3テーマについて、4つのテーブルに分かれて議論した。その後、各テーブルの代表者からそれぞれのチームでの「アクションプラン」について発表してもらい、最後には参加者全員から最もよかったチームはどこであったかを投票によって決定した。

 

【各チームから発表された「アクションプラン」について】

チーム1(微生物によるありとあらゆる誘導体展開):

誘導化の際には、微生物酵素反応と有機合成とをうまく組み合わせることが必要である。その母核の合成についても有機合成だけではなく、合成生物学的な手法で多様化できる。その実現のために、(1)酵素、生合成情報の蓄積、(2)蓄積させた情報を用いつつ目的に合わせた生合成遺伝子の合成、ゲノム編集、そして(3)アウトプットの検証、といった一連のスキームを回していく。

 

チーム2(微生物によるありとあらゆる誘導体展開):

誘導体展開にも骨格構築、官能基付与等様々な面がある。最近は酵素について、その遺伝子配列、反応機構、立体構造、由来菌株など多様な論文情報があり、それらを収集、体系化して有効利用するのにAIの活用は欠かせない。作りたいものをどうやって作るのか、といった逆合成解析や、反応効率向上のための酵素改変デザインにもAIの活用は必須である。また、実験部分についても、反応、分析、精製等、既存のロボットを活用して自動化を進めつつ、AIと連携させることによって最適条件を見出すようにすることで一層の効率化が可能となる。なお、従来の有機合成技術を適宜併用することによってもより可能性が広がると思われる。

 

チーム3(休眠遺伝子からお宝発見):

地球上に存在する微生物の中で圧倒的なマジョリティーである難培養微生物についても休眠遺伝子として議論の対象に含め、それらの活用法について話し合った。微生物の全ゲノム解析には、現代の技術ではノウハウを持ったバイオインフォマティシャンが必要不可欠であるが、今後はクラウドコンピューティングや量子コンピューターの開発など、マシンパワーの加速度的な発展が予想される。これらを用いて分析したゲノムデータから次々と新規物質の生合成遺伝子について予測し、さらにはどんなコドンパターンでも発現できるユニバーサルホストを用意することで、新規物質の効率的な取得につなげる。超高速シークエンサーや量子コンピューターの導入などは各社がそれぞれ行うのは効率的ではないため、一連の技術開発、機器導入を国主導で進めるのが望ましい。また天然物研究者の持つ属人的な暗黙知でさえも形式知に転換するAIツールの開発が必要である。

 

チーム4(エキストラドリーム):

新規化合物を効率よく高確率でとる方法を議論した。先人たちが築いてきた実験の作法や、妥当性のあるモノの考え方を敢えて無視して突拍子もないことに挑戦する必要がある。例えば、(1)混合培養では、自然界を模倣して10種以上の菌株を用いる、(2)分離培地では寒天にこだわらない、など。

 

投票の結果、最優秀賞としてチーム1が選定された。

以上