株式会社東京大学TLO / 代表取締役社長 山本 貴史

要旨

 2004年の国立大学法人化により産学連携の機運は急速に高まり、結果、大学等研究機関から産業界への技術移転件数は米国のそれと同様の上昇率に達している。他方、大学発ベンチャーの起業・上場・バイアウトも以前の一時的なブームから本格化しつつあり、産学連携がオープン・イノベーションの一翼を担う存在となりつつある。

 政府における様々な法整備や環境整備は整い、これから10年の具体的なアウトカムが期待されるが、一方で、産学連携による創薬の実現は欧米と比較すると依然低調である。 もちろん、大阪大学岸本元総長のIL-6(アクテムラ)や、現東大教授の間野先生の自治医大時代のクリゾチニブ(ザーコリ)等創薬に成功したケースは存在するが、このような成功事例の数は少なく課題は多い。

 周知の事実ではあるが、創薬にはかなりの年月と莫大な開発コストが必要となる。これをいかに効率化し産学連携によって創薬開発を加速化させるためにはどのような施策が求められるか。これをメインのテーマに諸外国との産学連携活動を比較しながら、今後の日本の産学連携のあるべき姿を議論する場としたい。